キャリア監査
リモート勤務を条件に転職するときに何を確認するか
求人票の「リモート可」は制度の名前であって運用の実態ではありません。4つの型に分解したうえで、自分の業務のどこが対面に依存しているかを測り、面接では制度ではなく直近の実績を聞く手順までを整理しました。
この記事の前提
- 想定読者
- リモート勤務を転職の条件に入れたいが、求人票のどこを見て判断すればよいか決まっていない30〜40代
- 読了後の状態
- リモートの条件を運用の粒度まで分解し、面接で確認する質問と、方針が変わったときの選択肢を用意できる状態
求人検索でリモート勤務の条件を付けると、該当する求人が並びます。ただし、その一覧の中身は揃っていません。全員が在宅を前提にしている会社と、原則は出社で例外として認めている会社が、同じ絞り込みの結果に入ってきます。件名だけを見て応募先を決めると、面接の後半でこの差に気づくことになります。
差が見えないのは、求人票に書かれるのが制度の名前だからです。運用は部署単位で違い、同じ会社の中でも職種によって変わります。時期によっても変わります。制度の欄に書かれた1行から、来年の自分の出社日数を読み取ることはできません。
この記事では、リモートを条件として使える粒度まで分解する手順を扱います。働き方への不満そのものをどう扱うかは転職・副業・学び直しのどれから着手すべきかで切り分けているので、通勤時間なのか裁量なのかがまだ決まっていない場合は、そちらが先です。ここでは、リモートで働くと決めた後の確認作業に絞ります。
「リモート可」は状態ではなく、運用の集合
リモート可という表記は、実際には4つ以上の条件の組み合わせです。分解すると、次のような項目に分かれます。
- 対象になるのは誰か。全社員なのか、特定の職種か、入社後一定期間を過ぎた人か
- 出社が発生する場面はどこか。定例会議、顧客訪問、四半期の全体会、機器の設定
- 居住地に制約があるか。通勤圏内に住んでいることを条件にしている場合があります
- 決めているのは誰か。就業規則で定められているのか、部門長の判断で運用されているのか
このうち最後の項目が、他の3つを左右します。就業規則に書かれている条件は、変えるのに手続きが要ります。部門長の判断で運用されている条件は、その人が異動した時点で変わりえます。求人票にはどちらとも書かれないため、面接で聞くしかありません。
求人票の書き方は4つの型に分かれる
同じ「リモート可」でも、運用の型は分かれます。応募の前に、どの型かの見当を付けておくと、面接で聞く内容が変わります。
| 全員がリモート前提 | 出社日が固定のハイブリッド | 原則出社で例外的に許可 | 職種や等級で分かれる | |
|---|---|---|---|---|
| 対象になるのは誰か | 入社時点から全員 | 全員だが、曜日は部署ごとに決まる | 申請して承認された人 | 求人票の職種が対象かどうかで決まる |
| 出社が発生する場面 | 全体会や合宿など、回数が数えられる範囲 | 固定日に加えて、繁忙期に増えることがある | 承認の条件が変わると、すぐ出社に戻る | 担当する案件の性質で変動する |
| 居住地の制約 | 制約がないことが多いが、時差の範囲は問われる | 固定日に通えることが条件になる | 通勤圏内であることが前提 | 職種ごとに条件が違う |
| 情報の入り方 | 記録に残す運用が先にできている | 出社日に決まる話が偏ることがある | 在宅の人が情報の後追いになりやすい | 同じ会社でも部署間で差が出る |
| 方針が変わったときの影響 | 事業の前提が変わるため、変更には時間がかかる | 固定日が1日増える形で調整される | 通知1本で運用が戻る | 職種の役割が変わると条件も変わる |
型の違いが最もはっきり出るのは、最下行の「方針が変わったときの影響」です。入社時点の条件が同じでも、その条件を動かすのにどれだけの手続きが要るかは型ごとに違います。3列目は通知1本で戻せる位置にあるため、条件として当てにするなら根拠のほうを確かめる必要があります。
型の見分けは、求人票の表現からある程度できます。出社頻度が数字で書かれている場合は運用が固まっている可能性が高く、「相談可」「柔軟に対応」とだけ書かれている場合は個別判断です。判断が個別ということは、判断する人が替われば結果も替わるということです。
自分の仕事のどこが対面に依存しているかを先に測る
条件を出す前に、自分の側を測っておきます。リモートで成立するかどうかは職種名では決まらず、業務の中身で決まるためです。
直近1週間の業務を書き出し、次の2つに仕分けてください。
- 相手と同時に時間を使う必要があるもの。打ち合わせ、その場での判断、教える作業
- 自分の時間だけで完結するもの。資料の作成、分析、確認、文書のやりとり
多くの場合、後者は場所に依存しません。問題になるのは前者ではなく、そのどちらにも分類されない三つ目の塊です。席にいることで自然に入ってくる情報、決まる前の雑談、誰かが困っている様子。これらは業務として書き出されませんが、実務では判断の材料になっています。リモートで落ちるのはここです。
書き出す作業自体は、経験を整理するときと同じ手順で足ります。何を任され、何を判断しているかの取り出し方はキャリアの棚卸しにまとめてあります。判断の種類が分かれば、その判断に必要な情報がどこから来ているかも見えます。
IT領域のように、同じ業界の中でも関わり方によってリモートの成立度が変わる職種もあります。案件にどこまで関与するかで働き方が変わる構造は社内SE・ITコンサル・SIerのキャリアを3軸で比較するで整理しています。
リモートを条件に入れると、他の条件が動く
条件を1つ足すと、他の条件が動きます。動く方向を知らずに絞ると、候補が消えた理由が分からなくなります。
| フルリモート中心 | ハイブリッド | 出社中心 | |
|---|---|---|---|
| 応募できる母数 | 最も少ない。勤務地の制約がないぶん、応募する側の競争は広域になる | 中程度。通える範囲という条件が加わる | 最も多い |
| 提示条件の決まり方 | 職務で決まる形と、居住地の相場に合わせる形の両方があり、求人票からは読めない | 勤務地の相場に沿うことが多い | 勤務地の相場に沿う |
| 入社直後の立ち上がり | 誰に何を聞けばよいかを掴むまで時間がかかる | 出社日に集中して聞ける | 早い |
| 評価のされ方 | 成果物と記録で見られる。過程が見えにくい | 出社日の印象と成果物の両方 | 過程も含めて見られる |
| 方針が変わったときの逃げ道 | 転居していると戻れない。条件そのものが前提だったため影響が大きい | 出社日が増える形で吸収される | もともと影響がない |
この表で最初に確かめるのは「提示条件の決まり方」の行です。勤務地に紐づかない働き方では、給与を職務で決める形と居住地に合わせる形のどちらもありえます。どちらなのかは求人票に書かれないことが多いため、面談で聞く項目に入れてください。提示された金額をどう分解するかは30代で年収を上げる転職と下げる転職に手順があります。
母数が減ることは、求人の探し方にも跳ね返ります。条件を絞り込むほど、公開されている一覧の中では当たりが出にくくなります。役職や専門性の階層が上がっているなら、そもそも一覧に載らない募集の割合が増えるため、スカウトや紹介を含む経路の使い分けを先に決めるほうが早く進みます。
面接では制度ではなく、直近の実績を聞く
「リモート勤務は可能ですか」と聞くと、制度の説明が返ってきます。制度は求人票に書いてあるので、聞く意味がありません。聞くべきなのは、直近に何が起きたかです。
- 配属予定のチームの人は、先月何日出社しましたか
- リモートの条件は就業規則で決まっていますか、部門の判断で運用されていますか
- 過去に方針が変わったことはありますか。あった場合、そのとき通勤圏外に住んでいた人はどうなりましたか
- 出社が必要になる業務は具体的に何ですか。その頻度はどれくらいですか
- 労働条件通知書の就業場所は、どう記載される予定ですか
最後の項目は、口頭の説明を書面に落とす作業です。就業場所が本社所在地とだけ書かれる場合、リモートは運用として認められているだけで、条件としては保証されていません。これが悪いわけではありませんが、条件だと思って入るのと、運用だと理解して入るのとでは、方針が変わったときの受け止め方が変わります。
答えが具体的であるほど、その会社では運用が固まっています。どの質問にも「柔軟に対応しています」としか返らない場合、決まっていないか、決めている人が面接の場にいません。
方針が変わったときの選択肢を先に決めておく
リモートの条件は、事業の状況や経営陣の交代で変わりえます。変わらない保証を求めるのではなく、変わったときにどうするかを入社前に決めておくほうが現実的です。
決めておくのは2つです。1つは、出社が週に何日まで増えたら再検討するか。もう1つは、その時点で自分が動けるかどうかです。
2つ目のほうが重いことがあります。リモートを前提に転居した場合、方針が戻っても住居はすぐには戻せません。配偶者の勤務地や子どもの学校が絡むと、さらに動かせなくなります。転居を伴う場合は、時期を試用期間の後にずらせるかを確認してください。会社側の事情ではなく、こちら側の選択肢を残すための判断です。
次にやること
まず、直近1週間の業務を書き出し、同時に時間を使う必要があるものと、そうでないものに分けてください。ここで前者が半分を超える場合、リモートを最優先の条件にすると、応募先の職種そのものを変える話になります。
次に、出社の許容範囲を数字で決めます。月に何日までなら通えるのか、その日数に片道どれだけの時間を使えるのか。ここが決まらないうちは、求人票の型を判別しても比べられません。
そのうえで、面接で聞く質問を5つ以内に絞って書き出します。面接の時間は限られているので、制度の説明で埋めないでください。書き出した質問のうち、答えが返ってこなかったものは、内定後の条件確認でもう一度聞きます。
よくある詰まりどころ
フルリモートに絞ると求人がほとんど残らない
母数が少ないのは前提です。残らない場合は、条件を「フルリモート」から「出社は月に何日まで」に置き換えてください。日数で表現すると、ハイブリッドの求人が候補に入ります。条件の名前ではなく、自分が困る境界の数字で絞るほうが、候補は現実的な範囲に収まります。
入社後に方針が変わらないかを確認したい
保証は取れません。取れるのは、いま決まっている条件の根拠と、過去に変わったことがあるかという事実だけです。この2つを聞いたうえで、変わったときに自分がどうするかを決めておくのが、実行できる範囲の対策になります。
リモートを希望すると、意欲がないと見られないか
理由を業務の進め方として説明できれば、印象の問題にはなりにくくなります。通勤時間を作業に充てたい、集中が必要な業務が多い、といった説明です。逆に、条件の話だけを先に出すと、担う役割の話が後回しになります。順番としては、担当できる業務を先に示し、その進め方としてリモートを置くほうが噛み合います。
現職がリモートで、転職先で出社に戻ることを家族に説明できない
条件が下がる方向の変化なので、金額の話とは別に扱ってください。出社が増えると、可処分時間が減ります。減る時間を何で埋め合わせるのかを、金額以外の項目も含めて書き出すと、家庭内での比較材料になります。書き出しても埋まらない場合、その求人は条件が合っていないという結論で構いません。