キャリア監査
職務経歴書は職種で何を変えるか|書く前に決める重点
職務経歴書はフォーマットを揃えても評価が変わりません。職種によって読み手が探している判断の手がかりが違うためです。経理財務・経営企画・IT・専門資格の4つの型に分けて、どこに重点を置くかを整理します。
この記事の前提
- 想定読者
- キャリアの棚卸しを終え、職務経歴書を書く段階にいるが、職種によって何を重点的に書けばよいか分からない30〜40代の会社員
- 読了後の状態
- 自分の職種で読み手が探している判断の手がかりを理解し、職務経歴書のどこに重点を置くかを決めて書き始められる状態になること
キャリアの棚卸しを終えると、次は職務経歴書を書く番になります。ここで多くの人が、書き方サイトやテンプレート集を開き、そこに並ぶ「見やすいレイアウト」を真似ようとします。ところが、レイアウトを整えても書類の評価はほとんど変わりません。評価を左右するのは、職種によって読み手が探している「判断の手がかり」が違う、という部分だからです。
たとえば経理・財務の担当者が語るべきなのは、数字そのものより、その数字を出すまでの確認手順です。一方で経営企画やコンサルタントが語るべきなのは、誰をどう巻き込んで意思決定に持ち込んだかです。同じ「判断した経験」でも、職種によって書き手が主語にすべき部分が変わります。
この記事では、職種を大きく4つの型に分け、それぞれで職務経歴書の重点がどう変わるかを整理します。キャリアの棚卸しで経験の言い換えを終えている前提で読み進めてください。棚卸しがまだの場合は、先にそちらから着手したほうが、この先の作業が早くなります。
職種で変わるのは書式ではなく重点の置き方
職務経歴書の型は、大きく分けて編年体(時系列で会社ごとに書く)とキャリア型(テーマごとにまとめて書く)の2種類しかありません。どちらを選ぶかは在籍社数や経験年数で決まり、職種による違いはほとんどありません。
違いが出るのは、各項目の中で何を厚く書くかです。求人票の「求める人物像」を読むと、職種ごとに評価軸が違うことが分かります。経理であれば正確性と再現性、企画であれば巻き込み力、ITであれば要件から運用までの一貫性、というように、職種ごとに「この経験のどの側面を疑われるか」が決まっています。書式を整える前に、自分の職種でどこを疑われるかを先に決めておく必要があります。
経理・財務系:数字より「数字を確定させた手順」を書く
経理・財務の職務経歴書で起きやすい失敗は、担当した業務範囲(月次決算、連結、税務申告など)を並べただけで終わることです。業務範囲は資格や経験年数から推測できるため、それだけでは差がつきません。
読み手が確認したいのは、その数字がどう確定したかという手順です。「どの段階で誰の承認を得たか」「差異が出たときに何を確認して原因を特定したか」「監査法人や税理士からの質問にどう対応したか」といった、判断が発生した場面を具体的に書くと、業務範囲の一覧より説得力が出ます。経理・財務からの次の一手を検討している場合は、経理・財務経験者のキャリアアップ先で、方向ごとに何が追加で求められるかを整理しています。管理会計の経験がある場合は、管理会計の経験を生かせる仕事も参考にしてください。
経営企画・コンサル系:巻き込んだ範囲と意思決定への関与を書く
経営企画やコンサルタントの職務経歴書では、「何を分析したか」より「その分析結果をどう意思決定に接続したか」が読まれます。分析だけであれば、外部のコンサルタントに依頼しても手に入るためです。事業会社側の人材に求められるのは、社内の利害関係者を動かして、決定事項として着地させた経験です。
書き方としては、「関与した部門の数」「最終的な決裁者」「決裁までにかかった調整の内容」を具体的に書きます。「関係部署と連携し」で止めず、どの部署の何に対する反対を、どう解消したかまで書くと、企画の実務が伝わります。経営企画とコンサルタントの仕事の違いに迷う場合は、経営企画とコンサルタントは何が違うのかで構造を比較しています。
IT・システム系:要件定義から運用までのどこを担当したかを線で示す
IT・システム系の職務経歴書は、使用した技術やツールの一覧が中心になりがちです。技術の一覧は求人票の必須スキルと照合する材料にはなりますが、それだけでは「どこまで任せられる人か」が伝わりません。
伝えるべきは、要件定義・設計・開発・テスト・運用という工程のうち、自分がどこからどこまでを線で担当したかです。開発だけを担当したのか、要件定義から入って運用の引き継ぎまで見たのかで、任せられる役割の大きさが変わります。社内SEとITコンサルタントでは、この線の引き方自体が異なるため、ITコンサルと社内SEの違いで仕事の中身を比較したうえで、自分の経験がどちらの型に近いかを確認してから書くと精度が上がります。SAP案件など特定領域の経験がある場合は、SAPコンサルタントとはどんな仕事かも参照してください。
資格・専門性は「取得したこと」ではなく「使った場面」で書く
資格や専門性を職務経歴書に書くとき、資格名と取得年だけを並べて終わる書き方をよく見かけます。資格そのものは、書類選考の足切りラインを超えるための材料にはなりますが、差別化の材料にはなりません。差がつくのは、その資格に紐づく知識を、実際の業務でどう使ったかです。
たとえば中小企業診断士を持っている場合、資格を取ったことより、社内でその視点をどう業務に持ち込んだか(経営会議での提言、他部門への助言など)を書くほうが、資格が生きた証拠になります。資格取得後にどう動けるかを整理したい場合は、中小企業診断士を取得した後のキャリアで、資格が実際の役割にどうつながるかを扱っています。
職種を変える転職では「共通する判断」を先に立てる
これまでと違う職種に応募する場合、職務経歴書の重点の置き方が一段難しくなります。前職の実務をそのまま書いても、応募先の評価軸と噛み合わないためです。この場合は、実務の一覧を書く前に、前職と応募先の両方で共通して求められる判断の種類を1つか2つに絞り込みます。
たとえば経理から経営企画に移る場合、「数字を作る」経験そのものは評価軸が違いますが、「数字の前提を疑い、根拠を確認する」姿勢は共通して評価されます。共通する判断を先に立ててから、それを裏付ける実務エピソードを選ぶという順番で書くと、畑違いに見える経験でも接続できます。何が持ち出せる経験かの見極め方は、キャリアの棚卸しの手順3(社内固有の言葉を外す工程)が使えます。
棚卸しの結果を職務経歴書へ転記するときの並べ替え
棚卸しの一覧は頻度順に並んでいますが、職務経歴書は応募先が知りたい順に並べ替える必要があります。応募先ごとに、求人票の「求める役割」に近い判断から上に置き、関係の薄い判断は下げるか削ります。
複数の応募先に同じ職務経歴書を使い回すと、この並べ替えができず、結果としてどの応募先にも刺さらない書類になります。応募先が変わるたびに並べ替えるのは手間に見えますが、棚卸しの一覧さえできていれば、並べ替え自体は短時間で終わります。時間がかかっているとしたら、それは並べ替えの作業ではなく、棚卸しがまだ終わっていないという合図です。
次にやること
職種の型を決めたら、まず1社分の職務経歴書を通しで書いてみてください。書き終えた時点で、各項目が「担当した」「対応した」という言葉で止まっていないかを見直します。止まっている項目があれば、それはまだ判断が言語化できていない箇所です。
書類の完成度に一定のめどが付いたら、次は相談先を決める段階に進みます。自分で書き切れる自信がない場合や、応募先ごとの調整に時間を割けない場合は、キャリアコーチングと転職エージェントの違いと使う順番で、どちらに何を頼めるかを整理しています。書類作成の代行を依頼する前に、自分がどこまで言語化できているかを把握しておくと、依頼した際の精度も上がります。